九州場所千秋楽

記憶に残る場所になるだろう。
朝青龍は七連覇、年六場所制覇、更には年間最多勝記録の更新と、前人未到の快挙を成し遂げ、次の横綱を嘱望されている琴欧州は期待通りに大関昇進を決めた。
琴ノ若は二十一年の土俵生活に幕を引き、土佐ノ海が幕内最年長力士になった。
そして栃乃花は見事な相撲で十一勝を挙げ、五年半ぶりに敢闘賞を受賞した。
三役以上が全員勝ちこしたのも五年ぶり。とはいえ大関陣は横綱の優位を脅かすことすらできず、朝青龍の引き立て役に甘んじた。
時代を築く者、時流に乗る者、時に屈する者。
幾度となく繰り返されてきた歴史の縮図なのかもしれない。
しかし、なぜだろう。テレビの前で手に汗を握り食い入るように画面を見つめていたあの頃のようには楽しめなかった。
朝青龍が強すぎるからだろうか。主役の座から日本人力士が長らく遠ざかっているからだろうか。生放送を見る機会が少なくなったからだろうか。それとも僕は若貴ブームに飲まれていただけだったのか。
いい相撲は何番もあった。
けれども、自分の頭の中で相撲の占める割合が小さくなってきているのは気のせいではないだろう。
変わらないのは、場所が終った後の虚しさだけだ。