とざいとーざい

相撲が好きですと言うと、では好きな力士は、という話になる。
僕は魁皇と答える。


注目し始めたのは三役に定着した頃だったからもう七、八年は経つ。
貴乃花、曙、若乃花らが一時代を築く一方で、同期入門ながら魁皇は彼らの後塵を拝するように
相撲人生を歩んできた。
確かに貴乃花は強かった。世間の衆目を集め、時には土俵以外でマスコミを賑わせながらも
相撲道に邁進する姿は求道者そのものであった。横綱たるものこうあるべし、という明確な理想像が
彼の中にあったのだろう。


一方の魁皇は、林檎を握り潰す握力を武器に豪快な取り口が持ち味なのであるがどうしても粗が目立つ。
左を差されればすぐに投げたがり、逆に相手を呼び込んでしまう。
右上手欲しさに立ち会いが甘くなる。
体勢が不利になると苦し紛れのとったりなんぞを試み自滅する。
大関以上とは互角の相撲を取りながらも下位力士相手にはぽろぽろ取りこぼす。
そしてなにより、いくら調子が良くても必ずといっていいほど期待を裏切ってくれる。


しかし、これらの点は見方を変えれば彼の最大の魅力でもあるのだ。
「今度こそ」と「またダメだろう」の相反する思いを同時に何度でも抱かせてくれる。
そしてそんな彼には大関という地位が良く似合う。
年齢的にも残された土俵人生はそう長くはないだろう。
願わくばもう一花咲かせて欲しいものだ。


もっと陰に隠れているけれど和歌乃山も同期なんだよね。