NHKのクローズアップ東北という番組を見る。
今年の夏に開催された大相撲久慈場所と、それに臨む地元山形村出身の関取栃乃花関の特集だ。
来年には久慈市と合併してしまう小さな村で、山形村として最後の一大行事を成功させようと奔走する谷地氏(栃乃花関の双子の弟)、関取に憧れ、巡業の土俵で大きなお相撲さんの胸を借りる少年、郷里のヒーローの凱旋と、目を輝かせる村民の姿を広報に収める村職員の方などの、それぞれの巡業までの日々を追っていた。
そういった、番組の主役とでも呼ぶべき方々も興味深く見せてもらったのだが、僕にとって印象的だったのは番組中では名前も挙がらなかった人たちの姿である。
本場所中の栃乃花関の勝敗に一喜一憂する村民、初めて目の当たりにするお相撲さんを屈託のない笑顔で迎えるお婆さん、テレビでお馴染みの高見盛関への歓声、故郷へ錦を飾る栃乃花関への惜しみない拍手などのシーンを見るにつけ、番組の節々から故郷の匂いのようなものが感じられたのである。
知人が出演していたわけでもないし、馴染みの風景が映っていたわけでもない。
それでもそれが故郷の様子であることがはっきりと感じられた。
久慈を離れてから十年近くが経つが、訛りは忘れてしまっても自分のルーツというのはそう簡単に揺らぐものではないようだ。