一匹の蜂が部屋の中を飛んでいた。
本能のままに蛍光灯に体当たりを繰り返す蜂に、僕は躊躇うことなく殺虫剤を浴びせた。
小さな命の存在を誇示するかのように鳴っていた羽音は次第に弱まり、蜂はふらふらと舞い、壁にぶつかり、墜ちた。
もはや羽は動かず、それでも肢は空を求めて藻掻く。
その六本の肢が動きを止めるまで、止めを刺すでもなく、窓外へ放り投げるでもなく、僕は、ただ、その一寸にも満たない虫を、見ていた。



そして今、教育テレビの生き物の特集を見ている。
「命って素晴らしいな」なんて思いながら。