名古屋場所十三日目

二敗で朝青龍琴欧州が併走しているが、正直言って琴欧州には優勝してほしくない。
現時点では、という但し書きを付記した方が適当だろうか。
今の琴欧州に勝利をもたらしているのは勢いと身体能力であるように見受けられる。
2メートルを超える体躯が彼の武器であることは言を待たないが、幕内最高優勝とはそれだけで得られる栄誉であってはならない。
四年前の秋場所賜杯を手にしたのは琴光喜であった。貴乃花の怪我や魁皇の自滅など、彼と優勝を結びつける要因は確かにあった。しかし相撲界のホープ朝青龍のライバルとして名を馳せたのも今は昔、辛うじて上位には定着しているもののそれ以上の躍進が期待できる状況でないのは火を見るより明らかである。
慢心とまでは言わないが、挫折を知らないままに頂点を極めてしまうと人は無意識のうちに守勢に入ってしまうのではなかろうか。
もちろんこれは普遍的なことではないので琴欧州がそうなるとは限らない。
しかし、一横綱大関を差し置いて新鋭が優勝するとするなら、上位陣の不甲斐なさを嘆かずにはいられないだろう。