勝利に燃ゆる栄冠は

球音。
一瞬の沈黙をおいて、どよめく観衆。
曇天に浮いた小さな点のようにしか見えなかった白球が少しずつ大きくなっていき、右中間の芝生席にいた僕の目の前に飛び込んできた。
打ち上げ花火を横から見るか下から見るかなんてタイトルの映画があったが、ホームランを真正面から見る機会はそうあるものではないだろう。
八回の表。金本選手が放ったこのホームランが今日の阪神の最後の得点だった。
初回に二死から四連打で三点を先制し、四回に赤星の二点適時打、さらに七、八回も二点を加え、終盤の楽天の粘りを辛くも凌いで阪神フルキャストスタジアムでの初勝利を掴んだ。






昨日の憂さを晴らすかのように楽天投手陣を攻略しての勝利だったが、この白星のポイントは一回裏の二死一、二塁の場面にあったと思う。
三点のリードを貰ってマウンドに上がった先発のブラウンは、簡単にツーアウトをとったものの後続の山崎、トレーシーをいずれも追い込んでから四球を与えてしまった。さらに五番の鷹野に対しても制球が定まらず三球続けてボール。不穏な空気が漂う中、一人の男がマウンドに駆け寄る。一塁手のシーツであった。彼はブラウンに声をかけると再び守備位置へ戻った。そしてブラウンはストレート二球で鷹野を追い込み、最後は外角へのスライダーでショートゴロに打ち取った。鷹野がこの後二打席連続本塁打を含む三安打三打点という活躍を見せたことを考えても、この危機を脱した価値は計り知れないものがある。試合の流れを決定付ける場面であったと言っても過言ではないだろう。走攻守ではない、第四の役割をシーツは果たしたのだ。








今日は試合開始の一時間半以上前に球場に到着したので阪神の打撃練習を見ることが出来た。下柳、江草、能見、杉山などの投手陣は外野のフェンス際でランニングやストレッチをしている。暫くしてその輪に井川が加わった。
井川投手の第一印象。


尻がデカい。


昔から「お尻の大きさが良いピッチャーの証」なんて言われていますが、間近で見ると確かに大きい。周りの選手と比べても群を抜いて大きい。さすがは虎のエースだ。
打撃練習が残り数分となり、他の投手がベンチへ戻っても井川、杉山の両投手はストレッチをしながらコーチと談笑していた。
そのコーチはこちらにずっと背を向けていたので誰かわからなかったのだが横顔に見覚えがあるような気もする。なんとなくグラウンドコートの襟元に目をやると28という刺繍が入っていた。


ん?28?


そう、その男はコーチなどではなく福原投手だったのである。すみません福原さん、数十分の間ずっとコーチだと思ってました。だってグラウンドコートも脱がずに何もしないで座ってるだけなんだもん。
ということで井川さんと、福原さんのツーショット、しっかり撮らせて頂きました。この画像は一生保存しておきます。背中と横顔しか写ってないけど。






そんなこんなで十数年の阪神ファン生活初の観戦は本当に充実したものになりました。
選手の応援歌も覚えたのでこれからはテレビの前でもしっかり歌いますよ。




阪神ファンで良かった。そんな二日間。



そうそう忘れちゃいけない、赤星選手の盗塁もちゃんと目に焼き付けましたよ。