かー

現状のようなモラトリアムというかフリーターというか社会の屑のような生活に終止符を打つ時に備えいくつかの企業のサイトにて求人情報を閲覧してみた。
地方の零細企業で情報化の波に乗り遅れまいと取り敢えず募集要項を掲載しているようなところもあれば、誰もがその名を知っている大企業ではフラッシュか何か用いて事務的な採用情報のみならず「先輩社員の声」や「ある新入社員の一日」などといった工夫を凝らした企画を通して若者からの親近感を煽り応募総数が増えれば篩にかけた時になんぼかマシな奴が残るベ、何となくハクがつく気もするしね、というような狙いが垣間見えて面白い。
で、某大手企業のサイトにも「新入社員座談会」と銘打たれた、いかにも人事部のおっさんが斬新なアイデアだと思い込んで自信満々に提案したようなコーナーがあり、ページの最上部に男三人、女が二人の5人の新入社員の画像が貼られ、続いて入社前と後で会社の印象が変わったかだの新人に求められるのは何かだの下らないテーマについて5人の若人による放言の数々が記載されていたのだが、二人いる女の、可愛くない方の顔が目に止まり、まあアナウンサーでもないのだし顔面の造作に少々難があっても仕事ができると見込まれれば採用されて然るべきであるなあとその女の顔を眺めていたのだけれども、なぜだか不意の感覚が胸の裡に沸いてくる。確かに小生は余りにも容姿が整った女性には気後れしてしまうので佳人よりは麗人、麗人よりは美人が望ましいと常々思っているところなのではあるが、それにしてもその女の顔はお世辞にもタイプとは言えず、極言が許されるなら蹴りたくなるような容姿とでも例えるべきでしかしそれもこれももしかして恋かしらん、と得心がいかぬままに漸く本題の発言内容へと視線を移すとそこには5名の姓名が記載されており、当然その女の名もその中にあり。喫驚。奇遇にもその名は小生の部屋の本棚に鎮座まします高校の卒業アルバムにも載っている、更にその顔写真からもこの二人が同一人物であることが容易に推察され、詰まるところその女は同級生だったんです。といっても三年間クラスも違ったし、生徒会の業務で合宿などに参加するはめになった際に見かけ、なんだあの小さくて姦しい娘はと友人と囁きあったりまた、当時所属していた部活の先輩がその女と交際しておりその先輩にはいろいろ世話になったもののそれは別としてあの二人は痛いカップルでこれは周囲の人間と意見も合致していたという程度で、おそらくは直接言葉を交わしたこともなかろう女生徒であって、向こうはこちらの名前すら覚えていないのかもしれない。それでも同じ時期に同じ学舎で三年間を送った人が元気でやっている様子を見て僕は嬉しくなりました。
ちがう。偽善者ぶってどうする。その女が高校時代は成績も目立つ程には良くなかったし、勉学以外の活動に於いても特には有能である、人望がある、ナイスキャラであるといった目を引く程の特長を発揮していたようには思われないので、さてはあの娘は大器晩成型であったかと膝を打ち、当方の現状と比較すると滅入るのでしなかった。