ケイタ

夢を見た。
誰かと話をしていた。
話題は中学時代の友人について。
会話の詳細は覚えていない。


その友人が転校してきたのは中三の春だったと記憶している。
彼はクールな雰囲気を纏った少年で、何か問題を起こして転校してきたと噂されていた。
何故だか彼と僕とは気が合って、一ヶ月もかからないうちに一緒に下校するようになった。
不良に憧れを抱きつつも優等生という殻を破る勇気がなかった僕は彼の抱える影に惹かれ、
彼もまた自分とは違うタイプの人間と遊んでみる気になったのかもしれない。
何もない田舎の中学生だったから特に何をしたということもない。ただ中学生活の最後の数カ月を思い出す時、彼の顔が浮かぶ。
翌春、僕は高校進学のために親許を離れ彼は地元の工業高校に通うようになり、連絡を取り合うこともなくなった。
彼の訃報を知ったのは高校二年の夏に帰省した時だった。バイク事故だったという。
身近な人間を病気以外で失うのはそれが初めてだった。
若すぎて死とは別の次元に生きているかのような錯覚を抱いていた僕は、生きることの儚さ、命の脆さを少しだけ知った。
最期の瞬間彼の脳裏には何が浮かんだのだろう。
僕は何を想いその瞬間を迎えるのだろう。
そんなことを考えながら夏は過ぎ、僕は彼より年上になった。